「紅葉鬼-童子奇譚-」終演いたしました。
千穐楽早朝は、夜中の2時半くらいに起きて寝付けなくなってしまい、身体がバキバキになりました。
緊張してたのでしょうね。何に緊張してるの?と家族に訊かれましたが、自分でもよく分かりません。幾度となく目にしていたたくさんの公演中止の報に、無意識に身構えてしまっていたのかもしれません。
現場に行くか最後まで悩みつつ、千穐楽の配信を観て、子どもを寝かしつけして、ようやく終わったのだとホッといたしました。
童子奇譚は先生のアイディアやキャラクターデザイン(衣装の質感の指定とかも書き込まれていてすごい素敵)を受け、制作陣で流れを話し合い、畑さんが形にしてくださり、そこから急遽バトンを繋ぐように参加させていただきました。スケジュールがタイトだったにも関わらず、現場はこの作品を良くしたいという気概にあふれており、触発されるようにもりもり想像力を働かせ台詞やト書きを書きました。
脚本家は普段は先行して書くものなので孤独に感じることの多い作業なのですが、現場とやりとりしながらの執筆は共同作業のようでとても刺激的でした。根っからの演劇育ちなので皆と作るのが好きなんですね。
トライフルの辻さんとは数々の作品を作ってきましたが、辻さんの作品への誠実さと愛があっての自分だなぁと思いますし、アニプレックスの大井さんも譲らないな(最高)とか、演出家の町田さんの素晴らしさは解釈やお人柄やセンスに至るまで語り尽くせないなとか、信頼する俳優陣からの意見にも感化されました。同じ方向を見ている座組の力を遠隔とはいえ感じて、書けば書くほど「紅葉鬼」が愛おしくて仕方ありませんでした。
少し前まで体調を崩していたもので、「朗読劇ささつ」でもご一緒していた現場のスタッフさんやキャストさんにご挨拶をさせていただきましたが、まず体調を気遣ってくださって、え、ちょ、優し過ぎる…そしてどうやって作ったの魔法?というクオリティに慄きました。どのセクションも漏れなく徹夜作業だったんじゃ…と思います。緊急事態宣言が出るの出ないのの中での現場の粘りに、この人たちと働けるって最高では?ここで骨を埋めたい(?)と思いました。
2020年は正直、何度も業界を離れるべきではと考えておりました。私にとって公演中止の報や劇場閉鎖、仲間の訃報の連続はあまりに辛く、今後もいつどうなるか分からない中で作り続けるのは耐えられそうにないと思ったからです。事務所と相談して少し休養期間をいただいてからは、心身ともに随分と強くなれた気がします。
よっしゃ、どんなことがあっても!やったる!という気概でお仕事も再開していたのですが、改めて「紅葉鬼」の愛あふれるメンバーに、ぐいっと引っ張り上げてもらえた気がします。
この時勢に興行があり千穐楽を迎えられるというのはとてもとてもとても幸せで有難いことだと感じております。開演時間の変更や自粛で劇場に来られなくなったお客様大変申し訳ございません。払い戻しにつきましてはアナウンスをお待ちください。今は冬、春になり新しい葉が芽吹くのを楽しみにしています。また劇場でお会いしたいです。
余談ではありますが、私はこの大竹しのぶさんの話が好きです。
病院に劇場があって患者さんに「あなたは悲劇を観なさい」「あなたは音楽を聴きなさい」とメスを使わないでお芝居などを観せたという話。
https://www.saf.or.jp/pdf/thousand_eyes/no17.pdf
心の健康を軽視してはいけないと思うのは、知人の訃報や自分自身も色々煮詰まってしまって体調を崩してしまった事が大きいです。演劇を愛する医師の友人や、医療従事者の方の言葉に支えられたことも大きいです。楽しむコンテンツは色々あれど「生きている」ということを実感したい時、私は劇場に勝るものはないと思っています。マスクをして、消毒して、お喋りは控えめに、辛い時は好きな演目を選んで劇場に足を運んでみてください。現場はこれ以上は出来ないくらいの感染症対策をしながらお待ちしております。
私も未発表の新作を数本準備中ですし、うちの家族も水面下で舞台出演の準備が進んでいるようです。頑張り過ぎずに、皆で乗り越えていきましょう。
いとうあさこさんが今年の抱負は生きると言ったそうですが、私もそうしようと思います。生きる!
ご観劇、ありがとうございました。
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アーカイブやディレイ配信もございます。前回公演を観てみるとまた味わい深いかと思います。是非。
舞台「紅葉鬼」~童子奇譚~
千秋楽ライブ配信特設ページURL:
<Streaming+>http://eplus.jp/kouyouki/
<ニコニコ生放送>https://sp.live.nicovideo.jp/watch/lv329880213
<シアターコンプレックス>https://theater-complex.jp/